【完】霧雨カーテン
 見た目が対照的とは言ったが、それは持ち物服装等々の趣向という事であって、顔貌については、付き合っていく中で慣れていかないと見分けがつかない程にそっくりだ。


 赤味がかった茶髪に染まった髪を丁寧にミックス巻きにして、綺麗に化粧を施し、あげるのが面倒だからと縫い直されたスカートを履いた妃奈。


 深い黒の髪を真っ直ぐに伸ばし、化粧っ気は無いながらも整った顔に微笑みを湛え、丁度膝丈程度のスカートの、由奈。


 姉妹でなければ、一緒にいるのも不自然に感じる程の違い。ただこの双子、驚くほどに仲がいい。



「あのねあのね、昨日由奈がさぁ、」


「妃奈…っその話はしないって、昨日約束したじゃない」


「え?そんな約束したっけ、それでさ」



 全くいつもこんな調子で、二人でまるでコントのようだ。



「日高君もこの電車だったっけ?」



 妃奈が声を掛けた相手。私の隣で座っている、日高 太陽。


 …違う。彼が普段乗ってる電車はこの一本前。私は、そのことを知っていてわざと、電車をずらしている訳で。


 その筈なのに、どうしてか今日は、偶然にも会ってしまったという。



「いや、普段はこの一本前。二人は?」


「うちらは普段は、この一本後。ねぇ、由奈?」


「それは妃奈が起きるのが、遅いからでしょ」


「由奈は早すぎるんだよ!毎日四時間しか寝ないで勉強してるんだから!!」

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