あの日【短編】
「…生徒や家族はすべて覚えているんだ。だけど君のことは初めて見るような感覚で…。お袋から聞いたんだけど、君はあの日のことを詳しく知っているらしいね。聞かせてくれないかな?」
先生、作り笑いするんだ……
さっきからそんな顔ばっかりだよ……
「…あの日のことは本当に聞かない方がいいと思います。その方がこれからの先生の身のためです。それに…私のせいであんな目に遭ってしまって…本当に申し訳ありませんでした。…じゃあ」
「あっ待って!」
先生の声も聞かずに私は会議室から出ていった。
あの日を忘れていて良かったのかもしれない…
だけど私のことまで忘れているなんて……
ひどいよ、龍太……