あの日【短編】
「…ただいま」
夜の8時、
僕は久々の仕事を終えていつになく疲れて家に帰ってきた。
「おかえりー!もうすぐご飯出来るから待っててね」
お袋は台所で料理をしており、親父は黙ってテレビを見ていた。
「…龍太」
僕が椅子に座った瞬間に親父がテレビに顔を向けながらそう言った。
「んー?」
僕は鞄から携帯を取り出してそれをいじりながら返事をした。
「…いや、あの」
珍しく親父がごもごもとしゃべっている。
「んー?何、全然聞こえないんだけど!」
「ん…あの、ほら、
千尋ちゃんの命日もうすぐだろ?」