あの日【短編】
「なんで!?あんな怖いものいたって無駄じゃん!信じない方がマシじゃね?」
男子生徒は興奮して立ち上がっていた。
クラスのみんなも男子生徒に賛成のようだった。
彼女はいつの間にか目線を窓の外から僕に変えていた。
「確かにお化けって響きだけで怖いかもしれない。だけどさ、それはみんなが見えないだけで怖いって思うのであって、実際見えたら怖くないんだと思うよ」
「絶対見えた方が怖いって~」
派手な女の子たちが笑いながら言った。
「お化けってさ、何かに後悔を持ったり、自分が死んでることに気づかずに出てきてしまう場合が多いんだ。人間とお化けなんてそんなに変わらない。生きてるか、死んでるか。ただそれだけ。」
クラスが一気に静まりかえった。
「…龍ちゃん、私もそう思う。お化けだっていつか人間にまた生まれ変わるんだし、人間と変わらない。そうだよね?」
彼女の前の席の早見藍が立ち上がってそう答えた。
僕はゆっくり頷いた。