あの日【短編】
♪キーンコーン
僕は授業を終わらせると彼女の席に向かった。
「…白石、ちょっといいかな」
彼女はびっくりした顔で頷いた。
会議室に向かう途中で後ろには少し猫背の白石が着いてきた。
その距離が近くて遠い。
―――ガラガラッ…
会議室を開けると今日はカーテンが全開になっていた。
五月の太陽が優しく僕たちを照らしていた。
「…ずっと思い出せずにいた、ごめんな、千尋………」
僕は千尋の体を強くきつく抱きしめていた。
千尋は泣きじゃくりながら僕の肩に腕を回した。
「…卒業式の帰り道に交通事故に遭って、私は一度死んだの。だけどもう一度どうしても龍太に会いたくって……。
そしたら天の神様がもう一度チャンスをくれて、命をもらったの。」
「それで白石千草という名前で高校生をやり直したんだよな?」
「…うん。それであの日、龍太が車にひかれそうになるのを私が助けようとしたとき、助けられなくて龍太は一度死んでしまったの……
だけど私は龍太にだけは死んでほしくなくて
天の神様に頼んだの。
"私の命を龍太にあげてください"って」
僕の目には涙が溢れた。