あの日【短編】
告白
五月の風はどうしてこんなにも彼女の髪の毛を優しく撫でてくれるのだろう…。
僕は新しい席替えに心を踊らせていた。
前の席の白石千尋。
彼女は学年トップの成績で、容姿も学年トップ。
黒くて柔らかそうなストレートな髪の毛に、白い肌に薄くピンクのチークが。
栗色の瞳に、少しテカったオレンジ色の唇。
僕は席替えをする前から彼女に恋をしていたんだ。
「…椎名くん、だよね?」
「え…あ、うん」
いきなり白石が振り向くもんだからびっくりして体勢を変えた。
「新しい席、よろしくね」
彼女はふんわりと笑った。
僕はただ頷くことしかできなかった。