あの日【短編】
白衣の男はお袋に一礼して部屋を出ていった。
「龍太が目を覚ましたこと、お父さんやおばあちゃんに電話で伝えてくるわね。近所の方にも、学校にも。あとこれ、お見舞いに来てくれた生徒さんからの手紙よ。」
お袋はたくさんの手紙を机の上に置き、部屋を出ていった。
「ちょっ…」
僕がなんで入院してるかせめて教えてくれよ…
…まああとで聞けばいっか。
手紙をパラパラと読んでいると改めて僕が英語教師なんだと感じる。
"龍ちゃん、意識不明と聞いてびっくりです。龍ちゃんの英語真面目に聞くから早く意識戻って(>_<)"
"龍ちゃん早く戻ってきて。みんな龍ちゃんを信じて待ってる。"
"龍ちゃん早く帰ってこいよ!俺、龍ちゃんの英語大好きだからさ。な、お願いだよ"
生徒たちからの手紙を読んで僕は涙が溢れていた。
頭には楽しく授業を受けている生徒一人一人の顔が浮かんだ。
もう遠い昔のようだ。
涙をぬぐっていると一通の手紙が目に入った。