Tricksters
この別世界ビルヂングを隅々から見てやろうと、俺は薄暗い裏道へと入る。
グルッと一周回って、それでも地下が分からなければ、もう一度電話をして、それでもダメなら、交番で聞いてやる。
薄暗い裏通りは、表の華やかな通りと比べると肌寒い風が吹き抜けている。ズカズカと奥へ奥へと進む。
「あっ……階段発見、粘り勝ち」
青天目ビルヂングの一番端の、北側にその階段はひっそりと存在していた。
必死に探さなければ見逃してしまうような下り階段は、大人一人がやっと通ることができて、すれ違いは絶対に無理。
というか、天下の青天目ビルヂングもこれは絶対に設計ミスだろう?
ゴクリと喉を鳴らす。
この先に、なにがあるのか分からないけど、 平均月収:50万だ! どんな仕事だってしてやるよ! 李花のために!
俺がもう少しだけ賢くて『美味い話には裏がある』って言葉を知っていたなら、この階段は降りなかっただろう。
それか、裏通りに繋がれた老いぼれ犬がけたたましく吠えたなら、この階段を降りることを躊躇ったかもしれない。