Tricksters
手品とかなんかそういうの扱う会社だよ。
「────いらっしゃいませ、トリックスターズへようこそ。本日は、どの様なご用件でしょうか?」


「へっ?」


 錆びた扉がガタンと音をたてて閉じた。その中は、まさに青天目ビルヂング。別世界。さっきのエレベーターがあったところみたいに、空調がきいていて綺麗で近代的。


 受け付けには、黒髪をパツンと切り揃えた目付きの悪い女が座っていた。

 首に巻いたスカーフをいじると、答えを急かすように俺を睨み付けた。



「あ……あの、一時に面接の予約をしている者ですが……」


 そんなに睨まなくてもいいだろ?

 こっちは、ちょっとした苦労して此処までたどり着いたんだからな。


「お待ちしておりました」

 女は感情のこもらない声でそう言うと、面倒臭そうに椅子から立ち上がる。


 顔とスタイルは、かなりいい。

 無表情に颯爽と歩くモデルみたいだ。


 ダークグレーのタイトなスカートには深いスリットが入っていて細くて長い足に、視線を奪われる。


 女は胸元にぶら下げていたカードを、受付の脇にある扉にスキャンした。


 よくわからないけど、多分スキャンしたんだ。



「所長、お客様お見えでーす。今から通しまーす」


『りょーかい、ミエちゃんいつもありがとうね』


 間抜けな男の声がスピーカー越しに聞こえると、前髪パツンのミエちゃんは嬉しそうに頬を赤らめた。

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