Tricksters
無敵のリクルートスーツに、必殺ネクタイ、手には皮のビジネスバックで武装した集団を横目で見ながら
今朝も、俺は入り口を通過して壁伝いに狭い路地に入る。
一気に寂れた雰囲気になって、鎖で繋がれた老いぼれだ犬が舌を出して水を飲んでいた。
狭い階段を降りて、現実と非現実の境界線的な鉄のドアを開けた。
関係者意外立ち入り禁止
「俺は、関係者だ!」
ドアを開くと
前髪ぱっつんミエちゃんが
俺の顔を見て「チッ」と舌打ちしてから、前髪からチラ見えしているキリリと書かれた眉毛をつり上げた。
今日はいつもに増して、機嫌が悪そうだ。
普通にしてたら、それなりに美人なのに勿体ないな。
「おはよう、ミエちゃん」
「チッ」
舌打ちは、やめようぜ?
胸からぶら下げた社員証をカードリーダーにスキャンすると
ウィーンと小さな音がして、扉が開いた。
そこまでは、いつも通りだ。
違うのは、トリックスターズ社内の雰囲気。
『びっくりぱな即完売!』
『東証一部上場!』
くす玉から、横断幕が垂れて紙吹雪が散っていた。
「ゼン所長、バンザーイ」