Tricksters
「どうぞ」
ミエちゃんが開いた扉の中で、俺は驚愕の光景を目のあたりにした。
ズラリと並ぶ机に、大勢の社員。一人一台ずつパソコンと電話が用意されている。
すげー大企業。
予想外。
あんな紙切れで社員を募集している会社には見えない。
「所長は一番奥の所長室でお待ちです」
「あ……ありがとうミエちゃん」
俺がそう言って中に入ると、ミエちゃんは「チッ」と舌打ちして扉をガシャンと閉められてしまった。
所長室……?
ミエちゃん教えられたとおりに、履き潰したスニーカーで奥へと向かう。
みんなスーツ着てやがる。
俺だけが、すりきれたジーパンに草臥れたネルシャツ姿だ。