Tricksters
「噂? 噂なんか信じねーよ。俺は、噂と嘘は嫌いだ」
タカシくんは、ゴクリと喉を鳴らした。
いいから、その"噂"ってなんなのか
何を隠してんにのか
俺に教えてくれ!
こんな時、所長なら得意の猿芝居で洗いざらい吐かせるんだろうな……
どうやったらいい?
「やっぱ噂じゃねーんだな。
淳一ごときが手に入れられる代物じゃないだろうけどな」
代物??
隠し財産か?
徳川埋蔵金か!?
「オイ! 新入り! 次の現場行くぞ!」
くそっ!
結局、俺はタカシくんを睨みつけることしかできない。
「はい! 今すぐ行きます!」
タカシくんは、手をあげて答えると
眼鏡をクイッと上げた。
「おい、俺は諦めたわけじゃない。アイツに伝えとけ」
「どうかな」
鼻で笑うと、タカシくんは「別にいいけど」と返してきた。
アイツ?
アイツって?
ヨシミちゃんか?
ゼン所長か?