Tricksters
「目というか、なんといいますか……
人は、第一印象がとても大切でして真部くんの場合
第一印象は"クールですましたヤツ"って感じですかね。
それから姿勢です。
すみません、失礼します」
城田部長は、突然俺の背後に回り込み「すみません」と謝ってから両肩をグイッと広げた。
向かいのホームで電車を待ってた親子がポカーンとした顔で俺たちを見ていた。
「肩を張って、肩甲骨を寄せる……それでニッコリ。
自分の考えてることが顔にでやすいんですよ。
はい、ニッコリしましょう。
肩甲骨を寄せる!!」
「はっ……はい!」
やべぇ。
城田部長、けっこう熱い。
『姿勢が悪い』って昔っから、ばーちゃんによく怒られてた。
飯を食うとき姿勢が悪いって、裁縫用定規でビシって叩かれて痛い思いしたことがある。
それを考えると、急に背筋が伸びて苦笑いする。
「そうです。
それが出来れば、なかなか営業に向いていますよ。
すみません。
そこからは根気とガッツで、何度も通って契約を取るのが我々営業課のお仕事です」
「そうっすか……」
よくわかったぜ。
営業課。
楽じゃないな……
こんな仕事続けてれば、城田部長みたいな垂れ目の笑い顔になっちまうかもしれない。
この人、寝てる時も笑ってそうだ。