Tricksters
俺の気持ちを察知したのか、お姉さんがコホンと咳払いをした。
「ごめんなさいね。所長は自分の名前にコンプレックスがあって、いつもこうなのよ。
あれの最中に、一番盛り上がってきたところで、本名の『ぜんたろう』って呼ぶと一気に萎えちゃうの
善し悪しの『善』に『太郎』で『善太郎』」
ふふっと、小悪魔的に微笑む清楚なお姉さんに寒気がした。
この人は、普通の人だと思ったのに……
「新入りくんに、そんなこと言わなくてもいいだろ? なんの恨みがあって、そんな……
何回も連呼するんじゃねーよ!」
所長は、男前な顔を手で覆うとソファに崩れ落ちた。
「ふふ、下世話な話でごめんなさいね。
私は、ユカリです。
所長の秘書兼
ただのセフレですから。
じゃ、さっそく仕事の話をはじめましょう」