Tricksters
内藤部長は、宙に浮いたロープを操る怪しげなオッサンの前で足を止めた。
「淳一くん、見て」
腹の出たオッサンが、似合わないタキシード姿でピンクとブルーのロープを宙に浮かせている。
手に透明の糸でもついてるんだろうな。
俺は、マジックを種明かしを探りながら見るタイプだ。
オッサンが、素早く右手を動かすとロープが蛇みたいにうねりだす。
観客は俺たちだけだ。
オッサンは、得意気に紐を動かす。
「うちは、個人消費者向けに簡単なトリックの商品を独自で企画して販売するから
オークションで何百万も払うことはないけどね。
今日は、チケットもらったから偵察に来ただけだし」
内藤部長が、オッサンに聞こえるように言うと
唖然としたオッサンの手から、ロープがボタッと落っこちた。
「ふーん、ワイヤー入りのロープね。今時古いわ
行きましょ、淳一くん」
ひでぇー