Tricksters



涙目のオッサンに軽く頭を下げて内藤部長を追った。


「企画部は、たまにこういう場所に来てインスピレーションを働かせるのよ。

想像力って、とても大事だから」


「はい」


内藤部長にまた腕を捕まれそうになったので、展示されていた水晶玉を覗くふりして避けた。



「淳一くんは、まず型にはまりすぎてるっていうか保守派なのよ。

もっと攻めてもいいと思うわよ。

想像力って頭の回転がよくないとダメだから、もしゼンを見返してやりたいならゼンみたいに思い付きでヒット商品を考えられちゃうくらいのイマジネーションが必要よ。


わかる?」




「なんで、俺がアイツのこと見返したいって思ってるの知ってるんですか?」



俺、話たっけ?



「ユカリのこと渡したくないんでしょ? 言っとくけど、ゼンは手強いわよ~

彼は、外見だけじゃないんだから」


なんだ、ユカリさんの話か……

確かに、ユカリさんがなんでアイツなんか好きでいるのかわかんねーけど


アイツの内面は、外見ほど整ってないような気がするけどな。



「ちょっと、どいて!!」



内藤部長に突き飛ばされた。


「佐野支店長!
お久しぶりです~
相変わらずお若いですね~どこのナイスガイが歩いているのかと思えば佐野支店長じゃないですか」


ナイスガイ?


ってか、俺の相談に真剣にのってくれてるわけじゃねーんだな。


内藤部長は、分かりやすすぎるほど饒舌にワッショイワッショイと佐野支店長を持ち上げた。




< 190 / 305 >

この作品をシェア

pagetop