Tricksters
「アイツのこと、マジで好きなんですか?」
ユカリさんの動きがピタリと止まる。
「俺、アイツもユカリさんのこと好きなんだと思います。
内藤部長も言ってました。『ゼンは好きな女に好きって言えない男だ』って」
「淳一くん……」
俺の周りには、ユカリさんみたいな清楚でこんなに綺麗な人はいない。
高嶺の花ってヤツだな。
泣きそうな彼女を目の前にしても、抱き締めてやることもできない。
「なんであんなに女癖悪いのか知りませんし、女にモテまっくっててムカつきますし、できたらユカリさんはあんな奴やめて欲しい気持ちもありますけど……」
そんな顔見たくない。
「淳一くん……」
「ユカリさん?」
一瞬、何が起こったのかよくわからなかったけど
俺の腕の中に、ユカリさんがいて……
「私が泣いてたの、ゼンには絶対内緒にしてくれる?」
「もちろんですよ……」
ユカリさんの細い腕が、俺の背中に回り
ユカリさんの顔が、俺の胸にうずまって
すごくいい香りがした。
「ありがとう、淳一くん。好きになっちゃうかも……」