Tricksters
「ハハハ、修理っていうより
折れてますから。
新しいものに交換させていただきます」
タカシくんは、乾いた笑い声をあげた。
「あら、そう? 悪いわね~
総務部長が宴会の席で『西遊記~』って言いながら振り回して折っちゃったのよ」
総務部長、柳田さんか……
別名、禿柳と呼ばれるファンキーな人だ。
頭皮が若干寂しいオッサンだ。
タカシくんは、一瞬恨みがましい目線でトリックスターズの扉を睨み付ける。
「すぐに、新しいのをお持ちしますね」
胸をなで下ろした俺に、尾林さんはお喋りを続けた。
「あー、よかった!
禿柳部長がバカなことするから、掃除のおばちゃんたち困ってたのよー
そう言えば、掃除のおばちゃんの旦那さん。
風邪がなかなか治らないからって病院行ってレントゲン撮ったら
肺に影がうつったんですって!」
尾林さんは、眉をハの字にさせて
今世紀最大の同情めいたため息をつく。
「息子さん、来年大学受験なのに……」
そこは、まさに悲劇的ドラマのワンシーンの様な沈痛な雰囲気。