Tricksters
呆気なく別れてから
一度も連絡がなかった。
俺も、なんとなくユカリさんに浮ついた自分が許せなくて李花には連絡できなかった。
それなのに、今更なんの用事だろう?
「李花?」
「じゅんちゃん!」
李花の声は、雑音にまみれて切迫していた。
「どうした? なにか……」
「助けて! じゅんちゃん!
李花、何も悪い事してないのに捕まっちゃう!」
捕まる?
捕まるって、誰にだよ。
この会話、誰かに聞かれないように俺は受付からコンクリートむき出しの階段を上がる。
「今、どこにいる?」
「李花、何も悪い事してないの!」
まさか、ヤミ金野郎がまた?