Tricksters
ゆっくりと枚数を数えると、ぴったり十五人の福沢諭吉さんがいた。
俺が李花に渡した十五万は、キャッシュカードでコンビニのATMで引き出した使いふるされた札だった。
この札束は、一度も使用された痕跡すらなく紙の匂いがする。
「少なかったかしら? お給料は、毎月二十五日にそれとは別に振り込まれるから安心してね」
――何かが、おかしい。
李花がヤミ金に手を出して、俺は無一文になった。
社長がヤミ金の返済が追い付かなくなって、俺は無職になった。
次の日には新しい仕事にありつき、李花に渡した十五万が戻ってきた。
俺の中の防衛本能が、ゆっくりと起動しはじめた。
何が、おかしいんだろう……
「はい、到着。今日は、この仕事が終わったら帰っていいからね。淳一くん」
車が二車線道路の脇に、ハザードを点滅させて停車した。
「はい、でも仕事って何だったんすか?」
「『とりあえず、ひたすら謝っといて』が仕事よ。所長がそう言ってたから、そうしてくれる?」
「…………できるか自信ねーけど」
「大丈夫!! 最初は皆緊張するのよ。
はい、これ社員証よ。
明日から、朝十時くらいに適当に出勤してね。
じゃ、初仕事頑張って」