Tricksters
最低にスリリングな日


────李花は、たまごサンドをパクリと頬ばると「おいしー」と笑った。



「じゅんちゃん、食べないの? 朝から、唐揚げ弁当なんか買ってくるからだよ。李花のヨーグルト半分あげようか?」


俺は、力なく首を横に振る。


「どうしたの? 大丈夫?」


「あぁ……」





佐伯建設は、フィーチャネス証券の影響を受けて倒産していたなんて……

社長は、バツが悪そうに笑いながら『未練がましいこと言って悪いな、ヤミ金なんかに手を出した俺にも責任はあるんだ……悪かった』と謝った。


だけど、社長が未練がましいなんて俺は考えなかった。

本当のことを教えてくれて、嬉しかった。


それと同時に、心の奥でくすぶっていた疑惑が一気に燃え始める。



アイツ……

トリックスターズのゼン所長
または、詐欺師ZENは

金欲しさに、フィーチャネス証券から十億を騙し取った。



こうやって、巻き添えくって苦しんでいる人の事を考えたことがあるんだろうか?




いや、アイツはないな。

いつも自分の事ばかりだ。


傲慢で身勝手で、女に緩くて……
それなのに人に好かれる……

アイツがいると、その場が一気に華やかになって
皆がアイツに注目して、その世界に引き込まれる。



だけど、所詮は詐欺師だ。










< 246 / 305 >

この作品をシェア

pagetop