Tricksters



車のロックが解除されて、俺は十五万の封筒と社員証をジーパンのポケットに押し込むと、とりあえず車から降りた。


なんとなく良心が痛むけど、明日は行くのをよそう。


十五万あれば、次の職探しができる。


この、訳のわかんない仕事も俺には無理だ。理解力がなくて何を言いたいのかが分からない。


仕事内容は、もっと分かりやすく伝えてくれないと


「ユカリさん、ごめん」


とりあえず、謝ってみた。


いつか、ちゃんと就職できたら青天目ビルヂングにこの金を返しに行こう。


彼女は運転席から降りずに、手を振った。


「いいのよ、気にしないで。でもアナタが謝る相手は、あっちでしょ? サヨナラ」


あっち……?


ユカリさんが指差した方を振り返る。





< 25 / 305 >

この作品をシェア

pagetop