Tricksters
車のロックが解除されて、俺は十五万の封筒と社員証をジーパンのポケットに押し込むと、とりあえず車から降りた。
なんとなく良心が痛むけど、明日は行くのをよそう。
十五万あれば、次の職探しができる。
この、訳のわかんない仕事も俺には無理だ。理解力がなくて何を言いたいのかが分からない。
仕事内容は、もっと分かりやすく伝えてくれないと
「ユカリさん、ごめん」
とりあえず、謝ってみた。
いつか、ちゃんと就職できたら青天目ビルヂングにこの金を返しに行こう。
彼女は運転席から降りずに、手を振った。
「いいのよ、気にしないで。でもアナタが謝る相手は、あっちでしょ? サヨナラ」
あっち……?
ユカリさんが指差した方を振り返る。