Tricksters
二枚目の便箋には、こう書かれている。
────我々は、組織だ。
君にも情報と任務に参加する許可を与える。
武尊之銀行の支援金受け渡し日時並びに、場所が決まった。
受け渡し日時は、新月の夜
場所は、武尊之銀行頭取の愛人宅
絶対に潜入してこい。
ただし、詐欺師歴の浅い淳一のためを思ってユニホームを用意してある。
北側の使われていない部屋のクローゼットを確認してみるといい。
新月の夜は、ピザを食べて盛り上がろうか?
俺のお泊まりセットを処分したら、淳一は組織から外す。
いつ行っても俺を迎え入れるよう心の準備をしておけ、顔には出すな。
いいか忘れるなよ。
「優しく冷酷に
俺たちは欺(あざむ)く……か」
「じゅんちゃん?」
「ハハハハハハッ!」
アハハハハ、笑いが止まんねー!
コイツ、正真正銘の馬鹿だ!
三枚目は、便箋じゃなくて宅配ピザのメニュー票だ。
北側のクローゼットを開くと、ピザ屋のユニホームが入っていた。
「李花、今夜はピザにしよう」
メニュー票を見せると、李花は渋い顔をした。
「えーっ、ピザージャ?
李花、ピザパットがいいーよ。今なら水着用パットがプレゼントでついてくるんだよ!」
「でも、李花はパットなんかいらねーだろ。
そんな余計なもんつけて、他の男にサービスするんじゃねーよ!
しかも、ほら見て見ろよ! 新月キャンペーン、新月の夜にピザをご注文いただいたカップルにはLサイズ無料でプレゼントって書いてあるぞ?
日付は……今夜だ」