Tricksters
そこには、サラリーマン風の男と、ごく普通の女がいた。


「遅かったじゃない淳一くん」


「へっ?」


「オマエが淳一か……人の彼女に手を出して……あんな高級車に乗る人妻から小遣いもらってるんだってな……」


サラリーマン風の男は、あからさまに俺に怒りを露にする。


ってか、話の展開が全く読めねーぞ?


「やめて、タカシくん。彼は、何も悪くないの! 彼を好きになったのは私なの……だから、お願い。私と別れて」





何だよ、此処は?

昼ドラの撮影現場かよ?


ユカリさん……は、車で走り去っていった。


「お願いタカシくん。別れて、淳一くんが好きなの」


「はっ?」


女が、俺の腕に絡み付く。
弾力性のある胸がギュッと押し付けられた。


俺には李花がいるし……ぶっちゃけ李花のほうが胸がデカイし、可愛い顔してる。

正直迷惑だ。



「本当に、そんな男がいいのか? ヨシミ」


タカシくんは、苛立った顔で俺を睨み付けると

ずり落ちた眼鏡を元の位置に戻す。


「いいの、タカシくんには関係ない」


俺にも、関係ないよな?



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