Tricksters
その二十億が乗ったキャスターがアイツの手に渡り、あとの二人がその脇をかためた。
しまった!
二十億が、アイツの手中に……
すると、通路から新たな懐中電灯が二つやってきた。
誰だ?
走りながら、二つの懐中電灯が俺たちを照らす。
「遅くなりました! SECOI警備会社の者です!」
「なに?」
キャスターの傍に張り付いていたのは、武尊之の頭取だと思う。
そりゃ、二十億はいってれば張り付きたくなるよな。
俺は、成り行きを見守る。
油断はできない。アイツが、次になにをするか見逃すわけにはいかない。
「突然の停電で、遅くなりました!
SECOI警備会社の者です」
「ななな、SECOI警備会社ならこの三人だと聞いているぞ!」
「事前に、警備員は二人で伺いますと伝えていたはずですが?」
「三人になった、と連絡してきただろ! さっき」
新しく来た警備員は、男二人組。
所長たちと同じ制服姿で、片手に懐中電灯を持っている。
「どうなっているんだ!」
頭取の怒鳴り声が、通路に響く。
「なぜ、警備員が五人もいるんだ!」