Tricksters
電気がチカチカと点滅して、ぱっと非常階段が明るくなった。
停電が復旧した。
「淳一……」
社長が悔しそうな顔をする。
俺は、この人の邪魔をしたいわけじゃない。
それなのに……
「よう、淳一。よくやった。
そのケースをこの佐伯さんに渡せ」
警備員の制服を着た佐伯社長の後ろから現れた男は、ずり落ちたメガネを元に戻す。
「タカシくん?」
暗闇でわからなかったけど、社長と行動を共にしていたもう一人の警備員はタカシくんだった。
「淳一、どうするつもりだ?」
ゼン所長は、腕を組んで一歩前に出る。
その顔を、タカシくんは目の敵とばかりに睨みつける。
「てめーが、ZENか……俺の行く先々で邪魔ばかりしやがる。フィーチャネスの金と、みゆちゃん返せよ!」
「ふん、タカシくんがボケっとしてるからだろ。
それに、みゆちゃんは向こうからどーしても俺が好きで好きでたまらないんですぅ! って泣くから抱いてやっただけだ」
アイツが男前の顔で舌を出すとタカシくんの中で、何かがブチ切れる音がする。
「抱いてやっただけ……って、最悪のヘタレ詐欺師野郎のくせに! みゆちゃん騙すんじゃねーよ!」
「だーかーら、騙してないって。みゆちゃんが『抱いてくれるだけでいいです』って言ったの。本人に確認してみろ!」
「ムカツクー!」
キーっとタカシくんの喚き声に、武尊之オッサン三人と社長は呆然とした。
「今さ……みゆちゃんどうでもよくね?」
俺の呟きで、言い合う二人はこっちを睨みつけてきた。