Tricksters
「わかった……別れよう。ヨシミ」

「うん、今までありがとう。タカシくん」


「最後に一つだけ言わせてもらうけど、そんな男と付き合っても幸せになれないぞ。

淳一とかいうオマエも、僕に何か言うことあるか?」



タカシくんとヨシミちゃんの視線が、俺に集中する。

おまけに、通行人の視線まで集めてやがる。

別れ話なら、自分ちとか人のいない場所でやれよな。

「黙ってないで何か言えよ」

「………すみません」


俺は、タカシくんに頭を下げた。

とりあえず、ひたすら謝っておけと言われていたんだ。

くそ……なんで、こんな奴に謝らないといけないんだ?




ヨシミちゃんの胸が、またムギュと俺の腕にあたる。

「申し訳ございませんでした……」


心にもない謝罪。


頼むから、胸を押しあてるんじゃねーよ。

こんな赤っ恥体験、二度とゴメンだ。



「ふん……そんな女、くれてやる。ちょっと顔がいいからって謝るしか出来ない低能な男に惚れる女なんていらない」


タカシくん……意外と言うじゃねーか?



「ちょっと待てよ」




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