Tricksters
「淳一と俺は、それなりに時間を共有してきた。
成し遂げた仕事もある。俺はずっと淳一を信頼してきた」
自分だけ傷ついた顔をする。
「だったら、なんで俺がトリックスターズに入れなかったんだよ! 用がない奴は切り捨てるんだろ?」
「淳一は、今後も俺たちに関わりたいか? こんなのが日常だぞ?」
シンと静まった避難階段。
俺は、コイツに今後も関わりたいのか?
「淳一は、建設業で独立するのが夢なんだろ……これからは邪魔するつもりはない。そのケースを渡せば、もう淳一の前には現れない。
迷惑もかけない。平和で安泰な生活を約束しよう」
ゼンが、力なく笑った。
「今日で最後だ」
そんな風に笑われると、胸が痛い。
振り回され続けたトリックスターズでの日々は、もう俺には手の届かない日々。
このケースがどこに転ぼうと、このムカつく男前所長と俺が関わることはなくなる。
突然やってきて宴会開くこともない。
友達の飲み会に乱入してきて、そのまま泊まっていくことも
男のくせにコンディショナーがないと喚くこともない。
『俺、男友達の家泊まるなんてはじめてだ』
『友達なんかじゃねーよ! 気色悪いこと言うんじゃねーよ!』
『ははは、淳一のそういうとこが好きだ』