Tricksters

「淳一と俺は、それなりに時間を共有してきた。
成し遂げた仕事もある。俺はずっと淳一を信頼してきた」


自分だけ傷ついた顔をする。


「だったら、なんで俺がトリックスターズに入れなかったんだよ! 用がない奴は切り捨てるんだろ?」


「淳一は、今後も俺たちに関わりたいか? こんなのが日常だぞ?」


シンと静まった避難階段。



俺は、コイツに今後も関わりたいのか?




「淳一は、建設業で独立するのが夢なんだろ……これからは邪魔するつもりはない。そのケースを渡せば、もう淳一の前には現れない。
迷惑もかけない。平和で安泰な生活を約束しよう」


ゼンが、力なく笑った。


「今日で最後だ」


そんな風に笑われると、胸が痛い。
振り回され続けたトリックスターズでの日々は、もう俺には手の届かない日々。


このケースがどこに転ぼうと、このムカつく男前所長と俺が関わることはなくなる。


突然やってきて宴会開くこともない。
友達の飲み会に乱入してきて、そのまま泊まっていくことも
男のくせにコンディショナーがないと喚くこともない。


『俺、男友達の家泊まるなんてはじめてだ』

『友達なんかじゃねーよ! 気色悪いこと言うんじゃねーよ!』



『ははは、淳一のそういうとこが好きだ』





< 271 / 305 >

この作品をシェア

pagetop