Tricksters
二十億は、注意深く階段を降りていく。
「ゼン所長! 三階です!」
「すぐに、行く!」
頭取は、ゼン所長を睨みつけた。
「お前ら……詐欺師だとか言われてたな……この金を運んだら、すぐに警察呼んでやる」
裏返った声で、冷や汗流しながら金の亡者は喚いた。
「てめぇ……」
このオッサン、嫌いだ。
自分のとこの銀行がヤバいからって、二十億のことしか頭にないんだ。
「おまえの愛人が閉じ込められてんだろ! ゼン所長は、それを助けてやるって言ってんだよ! たかが二十億くらいで、ガタガタ騒ぐな! みっともない」
一発くらい殴ってやってもいいのかもしれない。
それくらい頭にきた。
「あ、愛人とか人聞きの悪いこと言うんじゃないよ! このマンションは、職場の保養所としてだね……君。なぜ、金の事を知ってるんだ! さては、仲間だな!」
「あーあ、言っちゃった……淳一あとで後悔するぞ」とアイツは、ため息をついた。
「おまえの為に言ったんだろ! 馬鹿野郎!」
「そうだな、サンキュ! 三階到着。
淳一、扉開けてくれ」
「おう」