Tricksters
「じゅんちゃんは、お金とってないよ! パパ」
ヤバいヤバいヤバい。
李花の父親に会ったなら、どんな台詞を言おうか何度も何度もシュミレーションしてきたのに……
まさか、まさか、まさか!?
しかも、このオッサン嫌いなんだよ!
「はじめまして?」
「どの面で、はじめましてなんて言えるんだ!
李花は、うちの可愛い末娘だ! せっかくお前と別れたから見合いさせたのに逃げ出したんだぞ! どう責任とるつもりだ……何日も外泊させやがって……」
李花……
ヤミ金業者に追われてるわけじゃなかったんだ。
李花の父親の怒りとしては最もだと思う。
でも、自分はあんな美人の奥さんがいるのに愛人いるんだろ?
「お父さんの気持ちは、わかります……だけど」
「お前に何がわかるんだ、お父さんとか言われたくない!」
李花の父親は、顔を赤くして怒鳴る。
「パパやめて! 李花お見合いしてみて、やっぱりじゅんちゃんじゃないとダメだって気がついたの!」
両手を広げて「落ち着いてください! お父さん!」と声をかける。
ただ俺のやることは、全てが火に油を注ぐ行為らしい。
「李花、家に帰るぞ」
「やだ! 李花、じゅんちゃんと結婚するもん」
「絶対ダメだ! コイツは……」
そこまで言いかけて、李花の父親
武尊之銀行頭取は、口を噤んだ。