Tricksters
そりゃ詳しくは言えないだろ?
可愛い娘には、言えないよな……
「だから、コンビニなどで働かせたくなかったんだ。李花の高校から武尊之への就職斡旋したのに何故入らなかった!」
「だって、パパの銀行いたらチヤホヤされて世間知らずの甘えん坊になっちゃうと思ったんだもん!」
いやいや、李花
オマエは十分世間知らずの甘えん坊さんですから
とは、父親の手前言えないけど
冷や汗が額を伝う。
せっかく復縁したのに、引き裂かれるのは嫌だ。
「あなた……」
俺たちがギャーギャー騒いでいたからなのか
隣の506号室から愛人さんが顔を出す。
「あなた、昨日の」
愛人さんは、セクシーなスリップドレス姿だ。
グラマラスなボディ。
昨日はわからなかったけど、なかなかいい女だな。
「ほら、やっぱり。このチンピラは昨日のピザ屋だ!」
「パパ、この女の人
誰?」
通路に、ピンと張り詰めた空気が走る。
俺って、最低だと思う。
刺されるなコレじゃ。
でも、知ってるもんは知ってるし
バレたくないだろう? と意味深な目配せをすると父親は「うっ」と言葉を詰まらせた。