Tricksters
「そんな疑われると心外だな……」


バックミラーには、切なそうに窓の外を眺める所長がうつる。


窓枠に頬杖をついて「はあ……」と長いため息をついた。



「俺は、人を苦しめる詐欺行為は行わないのがポリシーなのになぁ……部下は何も分かってくれないなんて」


それから、またため息をついた。


隣車線を走っていた女性ドライバーが、それに見とれて前を走っていたバスに突っ込みそうになり急ブレーキを踏んでいた。




「淳一くんとは、まだ出会って日が浅いから俺の事を誤解しているんだと思う」

虫の鳴き声のように、か細い声。



「俺は、李花が心配なだけだ! お前が余計な例え話するからだろっ?」



これじゃ、まるで俺が弱いもの苛めしてるみたいじゃねーか?


そんな寂しそうな声だすなよな




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