Tricksters
「ったく、わかったよ。
俺、嘘つく奴は嫌いだから『みなさん、よろしく』」
「ハハハっ!
カッコいいなーこの野郎! 乾杯!」
乾杯って気分じゃねえよ!
待ち草臥れたとばかりに缶ビールが次々にぶつかり合うと喉を潤す販売促進部の面々。
俺も、プレミアを控え目に味わった。
普段、あまり酒は飲まない。
だけど、美味いなコレ
さすがプレミアム
佐藤さんたちは、床に正座したまま片手にビール、片手に箸をもって黙々と食べている。
所長は、既に次のプレミアム缶に手を伸ばしているし
コイツら異様だ……
こう見ると、やっぱり一番まともなのはユカリさんと俺だけだ。
「グラスとかなくて、すみません。ユカリさん、普段ビールとか飲むんすか? 紅茶とかハーブティーのイメージなんすけど……」
隣に座っていたユカリさんは、細くて綺麗な足を優雅に組んで
コクりと喉を鳴らして缶ビールを飲んだ。
セレブなベージュのワンピースに、フワリと巻かれた柔らかそうな髪。
色っぽい……
はっきり言って
所長に無理矢理こんなとこに連れて来られてビールなんてものを飲まされているんじゃないかと心配だ。