Tricksters



「ユカリさん……


ユカリさんが所長やったほうが良くないですか?」



佐藤さんが、ウンウンと頷いた。


「そんなことないわ、ね? 後藤くん」


だから……
後藤って誰だよ?

後藤くんは、首を傾げてウニをパクりと一口で食った。



本気で、訳わかんねー!

もういい、コイツらに俺の常識は通用しない。

プレミアムな缶ビールを傾けながら

タカシくんのサイズの合わない作業着姿を思い出しながら、俺は建設現場の社長が今どうしているか気になった。

それに一緒に働いてた奴等もどうしてるかな?

思えば、自分の事で手一杯で誰にも連絡してない。


仕事が変わるって、大変なことだ。

現に俺も苦しんでいるし(大概所長のせいだが)


社長は、自己破産して

それからどうしてるんだろう?



タカシくんみたいに、サイズの合わない作業着で、ペコペコと頭を下げながらモップとバケツを持っていたりするのかもな……


以前の、社長の姿からじゃ想像できないし

したくもなかった。





< 89 / 305 >

この作品をシェア

pagetop