Tricksters

「っていうか、このビラじゃなんの仕事かわかんねーよ……なんでこんなもん信用して電話しちゃったんだろ俺」


 なんの仕事かわかんねーのに、昨夜放心状態だった俺は、50万稼げるならと考えて電話番号を押していた。


「面接をお願いしたいんですけど」


『お待ちしておりました。さっそく明日、当社にいらっしゃっていただけますか?』


「はい。でもあの、俺はずっと建設現場で働いていてスーツとか、そういった気のきいたもん持ってないんですけど大丈夫すか?」


『かまいませんよ。気楽にいらっしゃっていただければ問題ありません。

 約束は午後一時でよろしいでしょうか。当社は、青天目(なばため)ビルヂング地下一階フロアーです。気を付けていらっしゃってくださいね。

 とても有名なビルヂングですので、すぐに分かると思います』



 ってわけで履き潰したスニーカーで、青天目ビルヂングを彷徨う。

 階段を見つけたけど、やっぱり上階に行くためのものしかない。


 気を付けて気楽に来てるのに、肝心の地下一階フロアーが見つからねーんじゃ意味ねーだろ!


 怒りながら、青天目ビルヂングの外に出てみた。

 こっちは、遊びで来てるわけじゃない。


 無一文なうえに、無職だ。毎月家賃の支払いに、車のローン、携帯代の支払いもある。

 絶対に、就職決めて、平均月収:50万を約束してもらわないと帰るに帰れないんだよ!



< 9 / 305 >

この作品をシェア

pagetop