Tricksters



「佐藤ちゃん次、アワビ!」

「もう自分でとってください。時間外労働で残業代請求してもよろしいですか?」

「ひどっ」


俺が悩んだとこで、社長を救えるわけじゃないけど


コイツは、ほんとにマイペースだ。


佐藤さんは、男前に所長には興味がないらしい。

全然相手にされてない。



「淳一くん、難しい顔しないで飲みましょ?
あはは、お酒あまり強くないのね。顔が赤くなってる」


ユカリさんの指先が、俺の頬に触れる……


チョン……と綺麗に手入れされた指先が、俺の頬に触れたんだ。



その瞬間は、スローモーションで……一瞬の事で


でも


この人すごく綺麗だ……。


触れられ頬を片手で押さえる、今の今まで李花の存在が心の中から消えてたことがショックだった。



「淳一くん、カワイイのね」



……カッカワイイ?

今までの自分って、どんな男だったけ?

少なくとも、女にカワイイと言われたことなんかねーよな?


俺は、動揺から焦って飲んだこともない日本酒を一気に飲み干したんだ。



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