Tricksters
俺の目の前で……
アイツとユカリさんの大人キッスは続く。
こんなキッス
俺には到底真似できない。
大人キッス、徹底究明して
そのテクニック、パクってやるべきか?
いや、無理だ。
覗き見ている時点で俺には真似できない、
そんなことサラリとやってのけるアイツに腹を立ててる時点で、負けてる気がする。
それになんだ、あの所長の色気は!
細めた目は、切なそうにユカリさんを見つめていた。
男が色気をだせるなんて、知らなかった。
次第にユカリさんは熱に魘されるように呼吸が乱れていく。
細い腕はアイツだけを求めて絡みつく。
「ゼン……」
キスの合間に囁かれた色っぽいやり取り
聞きたくなかったな、耳に残りそうなくらい切ない声だ。
「ゼンが好きよ……」
「だろうな」
アイツは、余裕の笑みを浮かべた。
格好良すぎて、ムカつく。
それからユカリさんの唇を好き勝手に優しく犯す。
「好き」と言われても、答えを返したわけじゃない。
『────詐欺師ZENに、目をつけられたら全てを奪われる』
ユカリさんの言葉だ。
それから、俺はただ頭を抱えて酔いつぶれたフリをしていたんだ。