訳有僕等
「行かねー。人込み嫌いだし」
カラスの中の人格は、皆それぞれ食べ物の好みも趣味も話し方も違う。
まったくの別人だと思うときの方が多い。
だって、本物のカラスはこんな風にあたしに話しかけたりしないしな。
「そーか。」
「なー。暇だし直人(なおと)との出会い聞かせろよ」
ケーキの上にのった苺をよけたカラスは、フォークをあたしに向けた。
「人の大恋愛を暇つぶしにするな。」
「暇ーひまひまひまー」
「わかった。わかった。」
ゴホンと咳をすれば、カラスは身を乗り出した。
心なしか楽しそうだ。