別れの曲を君に(短編)
人ならざる『魔』と人間とが、相いまみえるそんな時刻。
闇に蠢く異界のモノたちが、こちらへおいでと、生者を手招く。
『逢う魔が時』
――こういう、昼と夜の狭間の時間帯を、昔の人はそう呼び恐れたのだという。
「ううっ……、変なこと思い出しちゃった」
アイツの影響だ。
ホラーが大好きな、親友の美智(みち)。
怖いモノは大の苦手なのに、知らず知らずのうちに、美智から色々な情報がインプットされてしまう。
そして、1人になった時に思い出して、怖くなるのだ。
ぶるる。
再び、身を震わせると、綾はそそくさと歩き出した。