別れの曲を君に(短編)
いつもなら2人1組でやる図書委員の貸し出し当番が、もう一人が病欠で、今日は1人でやる羽目になってしまった。
そんな時に限って、整理する本が多かったり、いつもは手伝ってくれる友達に用事があったりするのだ。
「美智め、薄情なやつだ。女の友情より、男を取るなんて……」
思わず、愚痴が口を突いて出る。
いつもなら美智が、『どうせ一緒に帰るんだから』と、図書当番を手伝ってくれていた。
でも、今日は違ったのだ。
「ゴメンっ綾っ! 今日は、先帰るねっ!」
両手を合わせて、上目使いに謝る美智の表情は妙に明るかった。
綾は、すぐに『ぴーん』と来た。