別れの曲を君に(短編)
かの先輩は、爽やかスポーツマンタイプ。
サッカーなんて花形部のキャプテンなこともあって、女子にも人気があるし、競争率も半端なく劇高だ。
そのハートを射止めたのなら、これはかなり凄いことなのだ。
興味のない、サッカーの応援に付き合わされたり、先輩の誕生日プレゼントを選ぶのを、延々と付き合わされたりした甲斐があるというもの。
ウキウキモードの美智に触発されて、綾も何だか嬉しくなる。
恋のエネルギーというのは、恋する本人も、その周りの人間も元気にする力があるようだ。
「ほんと、今日はごめんねっ。今度おごるからさ」
「はいはい。せいぜい美味しいモノをおごって頂きましょう」
頑張れ、美智!
綾は、ウキウキスキップを踏みそうな勢いで帰っていく美智に、ガッツ・ポーズと共に、心からのエールを贈った。
でもその一方で、今日は一人で帰るのか……。
と、ちょっと淋しさが胸を過ぎったのも確かだ。