そのままの君が好き。
私はルーズリーフに直線を何本も描いた。

線の先に適当に出席番号を置いていく。

「あれ、何やってんの?」

隣から声がしたので振り向くと、

クラス一のデブの松崎がいた。

「席替えのあみだくじ」

「席替え? いつやんの?」

「次の時間。自習になったから」

すると松崎は急に大声をあげた。

「やったあ! 俺まだ宿題してなかったんだよね」

「そうなんだ」

彼の口から唾が飛んだのを見て、私は顔の位置を戻した。

「春川さん、宿題やった?」

「うん。一応ね」

そう答えてハッとした。

こいつ、まさか…。

恐る恐る松崎の顔を見ると、

彼は薄気味悪い微笑を浮かべてこう言った。

「じゃあさ…よかったら、宿題見せてほしいんだけど」

「…」

私は松崎から目をそらす。

どうして?

どうして宿題を借りる相手がいつも私なの?

一回や二回のことじゃない。

男子ともロクに話せないこいつが、どうして私なの?

「だめかなあ? 春川さん優しいから、つい頼っちゃうんだよね」

はあ?

頼る? 気持ち悪い。

別にあんただけに優しくしてるわけじゃないし。

好きで優しくしてるわけじゃないし。

だけど…。

私は頼れる委員長の春川さん。

清楚で優しい、優等生の春川さん。

私は頬に力を入れて微笑んでみせた。

「いいよ。見せてあげるね」

松崎はさらに薄気味悪く笑った。
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