【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
渓は陽介って呼ぶようになったんだなぁ。


なんて、前に座る2人の会話を耳に入れながら流れていく景色を見ていると、肩を叩かれた。


振り返ると直樹が手招きしているので、窓に向けていた体をいずちゃんの方に向ける。


「ほら、これ」


そう言って青い瓶を差し出した。


あ、これ…。


「約束してたろ?」


「覚えててくれたんだ…」


頬を緩ませながら瓶を受け取り蓋を開けた。


爽やかな匂いがさらに頬を緩ませる。


「香水?」


間で見ていたいずちゃんが、鼻をクンクンしながら聞く。


「うん。この前くれるって約束してたの」


「お、クールウォーターじゃん。直樹気に入ってなかった?」


赤信号でハンドルから手を離し、陽介が振り返る。


「今違うの使ってるからさ」


「ふーん。お前、車ん中でつけんなよ(笑)」


陽介の腕が私の頭に乗り、髪をぐしゃぐしゃっとするように撫でた。
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