【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
初めて入った109は、想像していたよりもワンフロアが狭く、夏休みだから人がごった返していた。


「うわ、すごい人…」


流行りの店は並ばないと入れないくらいで、並んで入っても人に押されゆっくり服を見るなんて状況じゃなかった。


「ごめん、人に酔ったかも…」


ふらふらする頭と気持ち悪さ。


こんな人ごみも楽しい、とはしゃぐいずちゃんを置いて外に出た。


外に出るとジメッとした暑さが体に触れる。


マルキュー横の植木の前に座り、高いビルを見上げた。


これがマルキュー…。


これが渋谷…。


ずっと憧れていた場所にいるんだって思うと、何だか自由になれたような気がした。
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