【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
子供扱いされるのは嫌いなはずなのに、直樹の手が心地良い。


一生懸命大人に近づこうとしてるのに、ガキなんて言われたら苦痛なはずなのに、直樹の笑顔に私まで笑顔になる。


直樹の三日月の目は魔法だ…。


「あ、そうだ」


直樹の手が突然思い出したように止まる。


?


「これ、いずみに返しておいて」


「……え?」


今…何て…?


固まった視線を、ゆっくりと直樹の差し出した手元に落とす。


心地良かった手の上には、いずちゃんお気に入りのピアスが乗っていた。


いずみ…?


何でピアスが…?


真っ白になった頭の中には、さっきまで気にもならなかった蝉の声がうるさいくらい響いていた。
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