【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「この前家に忘れてったんだよ」


……は……?


ピアスを見つめていた私に、そう直樹が言った。


うるさかった蝉の声が消える。


目には、ピアス以外の物が映らなかった。


金縛りにあったみたいに体が動かない。


動かさなきゃ…。


直樹の顔見て、あぁそうなんだっていつもみたいに言わなきゃ…。


でも、動かせない。顔を見たらいけない。


三日月の甘い笑顔が、きっと私を突き刺す…。


…ねぇいずちゃん、直樹の家に行ったなんて聞いてないよ?


ピアス忘れるって…何したの?


内緒にするほどのことだった?


ねぇいずちゃん…私はそれを聞いてもいいのかな…。
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