【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
偽善者


そう心の中で呟きながら、さっちゃんに手を振った。


さっちゃんはこの施設ならすごくいい先生なんだと思う。


子供たちの為にって色々制度を変える方向に持ちかけてるのも知ってる。


さっちゃんのおかげで、朝の雑巾がけがなくなり学習時間と言う名の自由時間にもなった。


だけど、さっちゃんはここで生活してるわけじゃない。


何日か泊まり込んだりしても、結局帰る家がある。


ここが嫌になれば、いつでも帰れる家がある。


私たちとは違う。


私たちは嫌でも帰る家なんかない。


逃げたって連れ戻されるだけ。


こんな環境にしか帰る場所がない私からしたら、さっちゃんは偽善者にしか見えなかった。
< 14 / 358 >

この作品をシェア

pagetop