【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
門の前を女の人が通る度に期待していた。


迎えに来るなんて約束はなかったはずなのに、私は迎えに来てくれるんだと信じてた。


大好きな母親が、私を嫌いになるはずがない。


そう信じていた。


病気が治ったらまた一緒に暮らせる。


母親もきっと今同じように私に会えなくて寂しいんだろうな。


幼いながらに、幼かったからこそ、そう母親の心配すらしていた。


二度と会うことはないなんて、かけらも考えていなかった。


「お前は親に捨てられたんだよ」


親が定期的に面会に来る子に、そうバカにされた時、相手の髪が束で抜けるくらい引っ張りながら反論した。


「違うもん!捨てたんじゃないもん!」


…本当に?


じゃあ何で会いに来てくれないの?


そう気づき始めたのは、小学校に上がる頃。
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