【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
だけど、ここに電話しなきゃ施設に戻るしかなくなる…。


おろしたランドセルの中から、飴を取り出し口に入れた。


落ち着け、落ち着け…。


心の中で何度も自分に言い聞かせながら、震える手を握りしめる。


受話器を左手で耳に当て、ボタンをまたゆっくりと押していく。


…プルル…


耳元で繋がった音がすると、心臓が跳ね上がった。


切ってしまいたい気持ちと、助けてほしい気持ちが入り混じる。


プルル…プルル…


3回しかまだ鳴っていないコール音がすごく長く感じた。


プルル…プル


「もしもし?」


耳に届く声。


想像していたよりも若い感じがした。
< 200 / 358 >

この作品をシェア

pagetop