【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「もしもーし?誰?」


受話器の向こう側の明るい声。


胸が締め付けられて痛くなった。


「いたずら!?誰よ切る」


「お母さん…?」


声を遮り、そう問いかけた。


初めて口にしたお母さんと言う言葉は、何度も頭の中で練習したのとは違った。


声を聞いたら自然に口からこぼれた。


本当は、ちゃんと自分の名前を名乗って母親がいるかを確認して…って、色々考えてたのに、声を聞いたら母親だって感じた。


声なんか覚えてもないのに、絶対そうだって確信すらあった。


「……え……?」


小さな驚いた声が聞こえる。


「…お母さん…だよね?」


そうだよって言って。


はるかだって気づいて。


どうしたのって心配して。


そんな気持ちだけで体中が溢れ返り、涙がボロボロこぼれ落ちた。
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